第51回 日本薬剤師学術大会(石川県金沢市)に参加して
 2018年9月23−24日

みずほ調剤センター薬局 上田さゆり

 金沢駅前の石川県立音楽堂を中心に近隣ホテルやホールを含む8会場にて開催されました。
 北陸新幹線の開通で、ますます活気にあふれた金沢が開催地ということもあり、会場は大勢の参加者で溢れていました。
 「人として、薬剤師として」というメインテーマのもと、生・老・病・死の4つのテーマに分けられた、おもしろい会場設定でした。

生:命を考え、子どもや障がい者医療・アスリートに対するアンチドーピング活動等
老:高齢者のポリファーマシー・腎臓病・フレイル・認知症など老いを考える
病:がん治療・緩和など様々な医療やプライマリケアおける薬剤師の役割・活動
死:人生の最終段階をどこで過ごすか、薬剤師としてどう関わるか

 「死」については、外来窓口でも、在宅でも、今後高齢者の終末期に関わっていくことが多くなると思われるので、大変興味深いものでした。

特別講演
「人生の最終段階における医療と薬剤師の役割」
みずほ調剤センター薬局 粂井 敬子

 尊厳死(平穏死)を希望する文書、リビングウィル(Living Will)は終末期医療への意思を伝えられない状態になる前に予め書面に残しておくこと、自己決定を表す文書です。
 普段から家族に話してあるから大丈夫、ではなく、口頭でなく必ず文書で残すことがポイントです。もちろん地域包括ケアの中でのアドバンスケアプランニング(ACP)も重要になります。
 薬剤師も人生の最終章の物語に寄り添って患者さんのトータルペインをしっかりとキャッチして傾聴し、薬だけにとどまらず、心の痛みをも癒してほしいとのお話でした。

分科会
「薬学的知識を緩和医療にどう活かすか」
みずほ調剤センター薬局 松普@暁子

 基調講演-オピオイド鎮痛薬とその副作用対策(鈴木勉先生)においては普段薬局で使用経験のあるスインプロイク(ナルデメジン)の開発経緯を聞き、オピオイドの副作用-便秘・嘔気・眠気などに選択的に対応した薬であることが理解できました。今後の医師への処方提案・服薬指導に役立てそうです。
 また私達と同じ調剤薬局で勤務し外来がん治療認定薬剤師として活躍されている先生のお話しでは”病院との薬薬連携からの在宅導入”の面で普段自分達が現場で実際に直面している問題を提起されており参考になった事例発表でした(あまりに身近すぎて思わず”そうそう”と言葉が漏れそうになりました)。
 薬薬連携等情報共有することがスムーズな在宅医療への移行ができること、他職種連携を密にしていくことが今後重要であると再確認しました。
 今回初めて学術大会に参加し同じ薬剤師といえど異なった角度から様々な意見を聞くことの大切さを実感できたと思っております。

分科会
「保険薬局でできる高齢者の腎臓病対策」に参加して
みずほ調剤センター薬局 長崎 彩子

 高齢者は生理機能が低下し、処方薬も多くなりがちで腎機能が悪化していくことが多いですが、全ての患者が腎機能を検査しているとは限らないのが現状だと思います。NSAIDsの長期服用患者や、ARBやACE阻害剤剤、CCBを併用していたり、K吸着剤やP吸着剤を服用しているなど、処方内容から腎機能の低下を疑うことも必要だと学びました。
 また、透析患者のうち糖尿病患者の割合は年々増加しており、糖尿病性腎症第2期までの早期発見、生活改善がCKDの予防に重要です。しかし蛋白尿が目立たず、腎機能低下が進行する症例の報告も多いため、注意が必要になります。
 薬剤師として働き始めてまだ半年の私ですが、この講演を聴いて改めて処方内容を見直してみると講演の中の事例に当てはまるような処方が多くありました。今回の講演を今後に生かしていきたいと思っています。

ランチョンセミナー5
「バイオ医薬品・バイオシミラーに関する現状とこれから」 に参加して
いの森・のなみ調剤センター薬局 岩田 宏人

 バイオシミラーはバイオ医薬品の後発品であるが、一般的に知られているジェネリック医薬品とは異なる。開発費が莫大にかかる上に先行品との同一性を示すことが困難である。ファイザー製薬は今後バイオシミラー市場に参入し、複数品目を市場へ投入することを目標としている。しかしながら、先行品との同等性・同質性に懸念が根強くあることや、高額療養制度の対象となることで患者には切り替えによる経済的なメリットがない事がが、普及を阻んでいると指摘されています。しかしながら、医療費削減という観点から、国としても患者さんにバイオシミラー医薬品を使用して欲しいところである。今後、国は先行バイオ医薬品をバイオシミラーに切り替えて使用する事を促進する政策があれば、医療費削減効果を更に大きなものになるであると思った。またそれに伴い、薬剤師として患者さんに質の高い医療はそのままで、将来の子供の為の医療費を残しておけるという認識をさ せる努力が必要だと感じた。
【特別編】
 気になる公演を聞いた後、我々は「近江町」を目指した。そこでは地元にとれた海鮮が いくつも並んでいた。私たちは大きな蒸し牡蠣を頂き、その後お寿司屋に足を運日ました。 3連休の中日という事もあり、とても混み合っていましたが、何種類かの美味なお寿司を 頂くことができました。その後「兼六園」に向かい、初秋の素晴らしい景観を拝みながら 前田家の文化にも触れることができました。その後、「石亭」にて夕食を頂きました。 次の日も目的の公演を見た後、「東山ひがし」に向かい金沢の古い伝統に触れる事ができ ました。2日間を通して、勉強会と金沢の文化に触れる事ができ、充実した「日本薬剤師 会in金沢」となりました。

分科会12
「老いを支える〜地域包括ケアにおける薬局・薬剤師のあり方」に参加して
小牧調剤センター薬局 水野真理子

 9月24日は分科会12「 老いを支える〜地域包括ケアにおける薬局・薬剤師のあり方」に参加した。
薬局・薬剤師もチームに加わった、多職種連携によるケアチームの必要性、地域包括ケアシステムの構築について学んだ。
 日本は「2025年問題」として、団塊の世代が2025年に後期高齢者(75歳以上)に達する事により、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている。子供が病気で死亡しなくなった一方で高齢者はどんどん増えていく。
 地域包括ケアシステムは進化して植木鉢図も新しくなった。土には介護予防の予防が書いてある。軽度の要介護者、要支援者は大幅に増加していくので、これからは介護予防活動の普及活動が展開されていく。介護予防、悪化予防のために体を動かす、また生きがいを与えるなど考えていかなければならない。植木鉢図の葉にセルフ・ネグレストに対応するために福祉と記載された。地域包括ケアシステムの対象のうちのセルフ・ネグレストには孤立死の恐れもあり、対応できる社会福祉職種による専門的支援が重要である。
 地域包括の前には共生社会がある。「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる、全員参加型の社会である。地域包括ケアシステムは急速な高齢者の増加への対応が課題であるが、地域包括ケアシステムの構築により形成される地域ごとのサービスのネットワークは子育て支援、困窮者支援等においても貴重な社会資源になり、共生社会を支える元になることができる。
 国は少子化対策も必要である。どうやって子供を増やすか。結婚率の低下、低年収、フリーターなど労働制度の仕組みもより良く構築しなければならない。
 設計図はできた。2025年からどう実行するか。人の生活を支えるのは介護士だけではなく、多職種協働でいかないといけない。生活というのは日常の、例えば修理はあそこに頼んで、あの人に御礼にお返ししてなど、食事だけではない。医療と介護は違う、支援する高齢者の生活は若い医師にはわかりにくい。多職種連携によるケアチームが必要である。また、平成30年度介護報酬改定があり、加算が増えた点において、経営マネジメント、政策支援も含めて介護士側が全部やるのではなく、医療と介護の連携が重要になっている。チームは通所サービス、訪問リハビリ、訪問介護、訪問看護、薬剤師、かかりつけ医師、歯科医師。ケアチームには上下関係がなく、場面によってリーダーが変わる。
 今後、薬剤師と介護支援専門員ケアマネージャーの連携、協働も重要である。薬剤師とケアマネージャーの連携のためには平時にどれだけ関係性を構築できるかである。共通の対象である患者=利用者の支援において、互いの情報を共有理解しパフォーマンスを最大化していく仕組みづくりが必要である。
 ケアマネージャーと薬剤師はお互いのことを知らない。結びついた時に何が出来るか?ケアマネジャーが薬剤師に望むことは、利用者の薬の管理をしてほしい(薬学的管理)。薬の使用時気をつけるべきこと(保管方法や飲み方、副作用の初期症状等)についてケアマネジャーにも伝えて欲しい。薬剤師の目から利用者の容体を見ることで医療ケアの改善点を主治医に伝えてほしい→ケアマネジャーにも教えて欲しい。医療と介護が円滑になるようパイプ役になってほしい。サービス担当者会議や地域ケア個別会議、退院時カンファレスなどに参加して発言提案してほしいということだった。
 実際、連携事例の成果も出てきていて、多剤服用ポリファーマシーの問題で話し合い、薬剤師が主治医の先生に声をかけて、内服薬が減らされた結果体調も良い状態が続いているケース。市販薬にこだわりが強い利用者に対して処方薬の併用について、薬剤師がアドバイスして効果などを説明して、本人が薬に対する理解を深めたケースがあるということだった。
 お薬手帳は普及率も高く連携ツールとしても秀逸であり、職能団体間でお薬手帳を活用した連携構築が取り組まれている。お薬手帳の医療機関・薬局からの情報に担当ケアマネージャーが持っている情報を挟むことにより介護サービスの利用状況、直近の情報について共有することができるので、平時の連携を促進させる仕組みとして普及させたい。1→10では単に10倍だけど0→1では可能性は無限大に広がる。1になればいろいろ繋がる。在宅を1人でも2人でも持つことが大事だということだった。
 2025年に向けて、高齢者の地域での生活を支えるために、また共生社会のために、薬局もチームとして医療と介護が円滑になるよう、薬剤師とケアマネージャーと連携して、地域包括ケアシステムの構築を支えていくことが望まれている。

学会・活動報告

このページのトップへ